こんにちは!前回、いろのいろいろな話でRGBとCMYKについてお話させていただきました。今回は「いろ」の見え方についてお送りします。
見る者によって、見え方はさまざま ~犬の視界は青い?~
前回、「わたしたちの脳は、光からの刺激を受けて色を認識している」ということに触れました人間の網膜には赤・緑・青3種類の光に感応する「錐体(すいたい)」と呼ばれる視細胞があり、これがカラーセンサーとなって、それぞれの光の刺激の割合を「色」として知覚している。そしてこの3色こそが光の3原色<RGB>である……という話です。
光の3原色とはなんぞや?という方は、ぜひこちらをご一読ください。
さて、人間は3種類の光の刺激(光の3原色)によって脳内でカラーを識別していますが、昆虫や魚類、鳥類は4原色以上の色覚を持つものが多いそうです。なんと、彼らの眼には紫外線が見えているのだとか。人間よりも多くのカラーセンサー(=錐体)を持っているためです。生物として生き残っていくため、発達したのでしょうね。
いっぽうで、霊長類以外のほとんどの哺乳類の色覚は2色だといいます。たとえば、犬の視界は青い、と言われているのだとか。
人間は赤・緑・青の光に反応する錐体を持っていますが、犬の網膜には錐体が少なく、また青と黄色にしか反応しないためです。青・黄とその中間色で構成された犬の世界には、赤色は存在しないのではないかと言われています。
もちろんこれは、わたしたちが実際に犬になることができない以上、錐体の状態から「そう見えているだろう」という推測にしか過ぎないのですが……。
・人間の視界
・犬の視界(イメージ)
もともと哺乳類も、鳥類などと同様に4色の錐体を持っていたらしいのですが、初期の哺乳類は夜行性であったため、色覚を司る錐体よりも明暗を区別する桿体(かんたい)という組織を発達させ、錐体は2種に退化。つまり、夜の暗い中で重要だったのは、捕食対象や敵の「色がどうか」よりも「動いているかどうか」だったというわけですね。
そして長い進化の道程で、霊長類だけが3つ目の錐体を取り戻したそうです。それは、恐竜が絶滅し日中も活動するようになった霊長類が、生存競争の中、ビタミンなどの栄養を多く含む色鮮やかな果実を見分けるため……という一説もあるのだとか。
人によって見え方は違う! ~十人十色~
人間の場合、錐体のどれかが欠けていると色覚異常ということになります。色覚異常は視力自体との関係はなく、また色覚異常のタイプと個人差によって程度はさまざまですが、きっと皆さんが思っているよりも多くの方がそれに該当します。
じつに日本人男性の20人に1人、女性では600人に1人が先天色覚異常といわれています。学校で1クラスに1人は存在する計算です。視力自体の問題でないのなら、そんなに大変ではないのでは?と思われるかもしれません。でも、信号の色が正しく見えなかったらどうでしょう。
先天性色覚異常の方の約70%を占める「D型2色覚」の場合、赤・橙・黄色・緑がほとんど同じ色に見えるそうですが、そうなると、広告デザインに強調色として使用した「キンアカ」(←前回記事参照!)が、まったく用を成さなくなってしまうのです。
「特価!」など単に目立たせたい場合ばかりではなく、たとえば保険契約書などの重要書類で、絶対に見落としてほしくない項目が、視覚異常の方にはかえって目立たない見え方のデザインになってしまっていたら……あるいは、そこに文字があることがわからないデザインになってしまっていたら……危険ですよね。
そんな、色の見え方が一般の人と異なる人も含め、年齢、性別、国籍、個人の差にかかわらずより多くの人に情報が正確に伝わるよう配慮されたデザインを「カラーユニバーサルデザイン(略称CUD)」といいます。色のバリアフリーですね。我々デザインを手掛ける側はもちろん世間一般にも、もっと考えていかねばならない項目のひとつだなあと思っています。
また、これが大前提ですが、異常のない人間同士が同じものを見たとしても、それぞれまったく同じ色に見えているとは限らない……。
世界はきっと、ひとりひとり違ったいろが映っているのではないでしょうか。