こんにちは、企画制作の後藤です。今回は私が最近読んだ本のご紹介をしたいと思います。
本のタイトルは『Ready Player One』で、VR(バーチャルリアリティー)をテーマにしたSF小説です。出版後、アメリカ各誌のレビューで絶賛され、特にアメリカのギーク(技術オタクのこと)の間で話題を呼び、一躍ベストセラーになったそうです。
小説の舞台は映画『ブレードランナー』のようなディストピア(退廃した近未来)で、エネルギー危機により荒廃した社会に住む人々は、仮想現実シミュレーションシステムである「OASIS」に逃避先を見出しています。そして、OASISの創設者Hallidayがその死後、遺言として、OASISの中にイースターエッグ(隠しプログラム)を仕込んだこと、そしてイースターエッグを初めに見つけた者に、彼の莫大な遺産を与えることを発表したところから物語は動き出します。主人公Wade Wattsをはじめとするプレイヤーたちは、自分が一番にイースターエッグを見つけようと奮闘します。小説の舞台は2044年であるにもかかわらず、彼らは80年代のポップカルチャー(ゲームや映画、音楽など)に精通しています。それは創設者が80年代ポップカルチャーの信奉者であり、イースターエッグを見つけるために必須の知識となっているからなのです。
OASISのユーザーは自分たちのアバターを自分の理想の姿にしていたり、サービスの有料化を目論むコングロマリットが派遣するアイデンティカルなアバターたちが跳梁していたりと、この小説には仮想現実で本当に起こりそうな、数々のVRあるあるが登場します。ここまで大規模な仮想空間はまだ実現していないので、VRありそうありそうと言うべきかもしれません。私もVRあるある早く言いたいです。
この小説は既に映画化が決まっています。スピルバーグが監督を務め、2018年に公開予定です。そしてそのファーストトレーラーが先日公開になりました。
当のスピルバーグ自身の名前も、この小説に登場しています。
僕はHallidayが「聖なる三部作」と称した作品を夢中で観た。スターウォーズ(オリジナルと新三部作をその順番で)、ロード・オブ・ザ・リング、マトリックス、マッドマックス、バック・トゥ・ザ・フューチャー、そしてインディ・ジョーンズだ(かつてHallidayはその他のインディ・ジョーンズ映画、つまりクリスタル・スカルの王国以降をなかったことにしたいと言っていた。僕も割と同感だ)。また、僕は彼のお気に入りの監督たちの映画もすべて観た。キャメロン、ギリアム、ジャクソン、フィンチャー、キューブリック、ルーカス、スピルバーグ、デル・トロ、タランティーノ、そしてもちろんケヴィン・スミスだ。
引用部分引用者訳 Ernest Cline著 『Ready Player One』 Broadway Books
直接名前が出ている箇所だけでなく、引用部分に出てくる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』もスピルバーグが製作総指揮を担当しています。『インディ・ジョーンズ』もスピルバーグが監督を務めています。なかったことにしたいと言われているクリスタル・スカルの王国も、スピルバーグが監督しているのですが、これはよかったのでしょうか…… ただ、映画となると版権の問題で、小説中に夥しく登場するポップカルチャーの要素はだいぶ削られてしまうだろうと思いますので、そこは残念です。
日本の特撮やアニメのキャラクターが数多く登場することもこの小説の特徴です。ゴジラ、ウルトラマン、マッハGoGoGo、宇宙戦艦ヤマトなどのメジャーな作品だけでなく、マグマ大使、日本版スパイダーマン(どちらも画像検索しないでください)など、マニアックな名前も登場します。そしてもちろん、ナムコやカプコンなどの、数々のレトロゲームも登場します。
『ハリーポッター』のような謎解きや友情、ロマンスなどもあり、思わず夢中で読み進めてしまう展開です。SFエンターテイメント小説としては出色の出来だと思いますので、興味のある方は是非読んでみてください。それでは。