東京国立博物館 興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」に行ってきました ~その2~

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こんにちは。進行管理の佐藤です。

11/26(日)まで上野の東京国立博物館[平成館]で開催された、興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」について書かせてもらう2回目です。

こちらも合わせてご覧ください。

『東京国立博物館 興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」に行ってきました ~その1~』
https://www.daishinsha-cd.jp/blog/unkei

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 ■いくつかの、今回展示の運慶仏の感想を

●大日如来坐像(奈良・円成寺)

溌剌、としばしば形容されますが、のびやかで生き生きとした印象の大日如来像です。今回、坐像をあえてわずかに後傾させている(約4度)と聞いてから、会期中は真横からの鑑賞に時間を費やしました。体幹部に奥行を持たせる造形意識が、その後の運慶作品に引き継がれることからも運慶デビュー作と紹介されるにふさわしいと思います。

当作品が東京に来るたびに足を運んでいますが、実物を目にするとそのサイズに毎回驚かされます。写真もそうですが、記憶ではもっと大きな印象として残っているのです。

運慶作品全般に言えることですが、作風・スケール感のためでしょう、実際よりも記憶に大きく刻まれていることがよくあります。典型的なのがこの作品、坐像ですが実はほぼ等身大で、そこがまた青年っぽい印象を残します。まだ円成寺で拝観したことがないので、いつかはきっと足を運ぼうと勝手に心に誓いました。

 

_毘沙門天立像(静岡・願成就院)

私が初めて願成就院の当毘沙門天立像を含む諸仏の存在を知ったのは、お寺で発行したモノクロの冊子を読んだ時でした(ウン十年前)。当時まだ運慶仏と認定されていなかったのですが、胎内から発見された銘札などから、30歳代の運慶の真作として2013年(平成25年)に国宝指定されたことをこのたび知りました。

会場でのポジションやライティング、周囲360度から鑑賞可能な配置。当展の主役のひとりです。図録の裏表紙も飾っています。

 

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堂々とした体格に、生きているかのような強いまなざし(玉眼を使用)。着用している鎧ごと今にも動き出しそうな、それでいて静謐な厳かさを同時に感じます。360度どこから見ても(背後も美しかった)見飽きることがありませんでした。

願成就院へは幾度か足を運んでいます。伊豆に温泉旅行へ行った際にふらりと立ち寄られては如何でしょう。伊豆箱根鉄道駿豆線_韮山駅下車、徒歩約15分です。

 

_無著(むじゃく)立像、世親(せしん)立像(奈良・興福寺)

日本肖像彫刻の最高傑作と称せられる当作品。異論ありません。個人的にも日本肖像彫刻の最高傑作だと思います。日本に、これほどの肖像彫刻が現存する幸せを改めて感じます。

老人と壮年のお坊さんの姿から、なぜこんなにも強く精神性を感じ、心を揺さぶられるのか。対峙のたびに説明のつかない感情が湧きます。

例えば日によってはこちらが鑑賞しているはずなのに、作品から眺められているような、問いかけられているような気持ちになりました。

作品と向き合う時間は至福ですが、内省的にもさせられます。結局、毎回この両作品の前で、最も時間を過ごしたように思います。

尚、運慶作とされる無著・世親立像ですが、運慶工房の作品と考えたほうが近いようです。運慶は一門を率いるプロデューサーのような立場で、無著、世親の両立像は運慶の五男・運賀(うんが)と六男・運助(うんじょ)が担当したようです。相当な分業システムが確立していたはずですが、それで完成した作品がこれほどのものとは。鎌倉期の仏師の驚異的な技量に、またそれをまとめあげた運慶に心底感服せずにいられません。

 

_制多伽(せいたか)童子像(和歌山・金剛峯寺)

数年前に都内の他美術館で初めて鑑賞した際は、興奮のあまり帰路の地下鉄から知人に「パーフェクト」とメールしてしまった作品。その時とは展示アングルも異なり、ガラスケースには入っていますが(小さめの作品なので)目線よりやや上の位置で、お顔を余すことなく鑑賞することができました。

どこかで読みましたが玉眼表現の頂点と言っても過言でなく、それくらいこの少年の姿をした作品の眼力が強烈です。目を奪われたらなかなか離すことができません。ガラスケースの前はいつも鈴なり、しかも皆なかなか場所を動かない(笑)、その気持ちはよくわかります。

動き出すかのような生命力を与えられていながら、同時に小さなパーツのひとつひとつが奇跡のように一体に破綻なく集約された、みごとな造形でした。

余談ですが、会場が空いていた日には、壁にガラスケースの中の八大童子像それぞれのシルエットがくっきり浮かび上がり、非常に美しかったことを付け加えます。

 

■興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」を振り返って

結局毎回、お気に入りの仏像を重点的に鑑賞していました。回を重ねるごとにそれが顕著になりました。当特別展は著名作品ぞろいのため、どの作品についてこのブログで触れるか真剣に悩みましたが、こうした機会などそうそうないでしょう。なんて贅沢な悩みかと思いなおし、どうしてもこれは触れておきたいという作品について書かせてもらいました。今回触れられなかった作品についても、いつかお話しできる機会が訪れることを願っています。

 

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開催概要(※終了しました)

会期:2017年9月26日(火)~11月26日(日)

会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)

〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9

東京国立博物館ウェブサイト

http://www.tnm.jp/

Topics: コラム, レポート, 休日・家族


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